学校日記

“一隅” H22. №4

公開日
2010/09/20
更新日
2010/09/20

校長メッセージ

− 子どもを見る −

板東(ばんどう) 元(げん) 氏は旭山動物園の副園長、「一隅H22.№3」でも少し触れましたが、今回は詳しく話しをしてみます。

旭山動物園には飼育係がいません。「飼育展示係」という役職があるのだと。「飼育担当している動物を、最高の状態でお客さんに展示すること、動物の魅力を伝えることが仕事」だといいます。単に飼育し、生かしているのではなく、動物の魅力を観客に伝えるために動物と係わることが動物園の本務だと明言します。

動物園が抱えているジレンマは「めずらしさ」です。

少しでもめずらしい動物、パンダやコアラを集めることが目指されると、「時間がたつと飽きられてしまう。そして、また次のめずらしいものへの人の気持ちはどんどん移っていく。そうするとお客さんが減り、動物園はまた貴重な動物を世界中から集め、消費し続ける」悪循環に陥ってしまうのです。

だから、こうした悪循環を断ち切るために「めずらしさ」ではなく、動物園では見慣れているはずの動物がもっている「すごさ」「すばらしさ」を見せることに徹するのです。

「野生動物は、ぼくらの想像が全く及ばない能力を持っていて、それぞれのやり方で生きている」「動物たちは、人間とは全く違うスケールで生きています。めずらしいか、めずらしくないか、なんて、人間が勝手に決めた、勝手な価値観」でしかないのです。(サイト・北海道人「魅惑の動物園」より)

板東元の少年時代はファーブルの如くです。ヤモリが大好きで一心に観察をしていました。「どうやってガを捕るのか、どうやって吸盤みたいに壁にひっついているのか、そんなことばかり考えて、じっと見ていた」のです。そんな板東少年を両親は何も言わず見守っていたといいます。

「そんなつまらないことやめなさい。」とか「キャー」とか言ってヤモリを追い出してしまったら、「きっとそこで僕の興味は尽きてしまったと思う。」と振り返ります。

板東はこうした自分の少年時代を顧みながら「子供たちは大人に見えない何かを見ている。」と述懐しています。(板東元『夢の動物園−旭山動物園の明日−』角川学芸出版、2008)

動物の特性、能力を研究して動物園の展示に生かすことと、子どもの特性、能力を引き出すための研究をすることとは酷似しています。教材研究と子ども理解こそが授業の根っこです。

運動会に向け、忙しさは募りますが、今年の研修はどの教科で、どの単元を試そうか?子どもにどんな力をつけようか?は、いつでも念頭にあってほしいと思います。