校長挨拶

創立80周年――未来を創り出すエージェンシーを育む学校へ

                           沼津市立沼津高等学校・中等部校長  伊藤 直美

 

本校が産声を上げたのは、戦後の混乱がまだ街に色濃く残る昭和21年でした。沼津の再興は教育にこそ託されるべきだという強い思いに支えられ、私たちの学校は歩み始めました。以来80年、校訓「求道」の精神のもと、文・武・芸の三道鼎立を大切にしながら、生徒たちの中にある“人としての光”を磨き続けてきました。

80年という歳月は、地域とともに歩み、地域に支えられてきた歴史そのものです。数えきれない卒業生が、沼津を愛し、困難に向き合い、未来を切り拓く存在として社会で活躍しています。

この節目の年、私たちは教育目標を「あすへのゆめをみつけ あゆみ続ける人」と掲げ、学びを一層進化させます。

その中心にあるのが、OECDの「Learning Compass 2030」を基盤にした「探究ステップアップコンパス」です。

Learning Compass 2030」では、学習者がより良い未来を創るために必要な力として、「生徒エージェンシー」が中心に置かれています。エージェンシーとは、単なる主体性ではなく、“自ら考え、行動し、責任をもって社会をより良くしていこうとする意志”のことです。これは、知識やスキルだけではなく、価値観や態度も含めた“人としての総合力”が問われる概念です。

さらに、未来を創造するために必要な力として、新たな価値を創造する力、対立やジレンマに折り合いをつける力、責任ある行動をとる力という「変革を起こすコンピテンシー」が示されています。

本校の「探究ステップアップコンパス」は、この学びの枠組みと深く響き合うように設計されています。6年間の探究学習を通して育てたい3つの力は、次のようにエージェンシーの核心と結びついています。

 

●つたえて、つながる力

自分の考えをわかりやすく伝え、対話や協働を通じて新しい価値を生み出すことです。多様な意見を受け止め、協働し、社会に働きかける姿勢は、「新たな価値を創造する力」と重なります。

生徒が自分の思いを伝え、仲間とつながり、地域とつながることで、学びは“自分ごと”へと変わっていきます。

 

●考えを深め、問い続ける力

自分と社会との関係から問いを見つけ、複雑な状況や価値の揺らぎを受け止めながら、探究を深めることです。これは、「対立やジレンマに折り合いをつける力」に対応します。

正解がひとつではない世界で、自分の視野を広げ、問いを磨いていく姿勢こそが、未来を切り拓く原動力になります。

 

●選んで、動く力

課題解決に向けてプロセスを構想し、目的をもって行動することです。これは「責任ある行動をとる力」そのものです。

小さな一歩でも、社会との関わりを意識し、責任ある選択をする。その経験の積み重ねが、生徒エージェンシーを確かなものにしていきます。

 

 

80年の歴史を土台に、未来へ向けて新たな一歩を踏み出す生徒たち。地域の人々との出会い、仲間との対話、挑戦と失敗の積み重ねの中で、自分の視野を広げ、問いを磨き、行動へと踏み出していきます。その姿はまさに、羅針盤を手に未来へ航海する探究者です。

私は、その経験を通して生徒一人ひとりが「自分を見るメガネ」「他者を見るメガネ」「社会を見るメガネ」「未来を見るメガネ」を使いこなしながら、自らのエージェンシーを育てていくことを心から願っています。

 

異年齢が共に学び合う落ち着いた環境の中で、生徒たちが自分の夢を見つけ、歩み続けることができる学校でありたい。そして、地域に愛され、地域とともに未来を創る学校であり続けたい。本校はこれからも、求道の精神を胸に、生徒たちが“未来をつくる担い手”として羽ばたくための学びを、これからも紡いでまいります。どうぞよろしくお願いいたします。