学校日記

“一隅”№15

公開日
2010/08/15
更新日
2010/08/15

校長メッセージ

−学びの本質を考える−

平成21年2月下旬、アメリカ、アカデミー賞の外国映画部門のオスカーは、日本映画「おくりびと」に贈られました。原作は青木新門の『納棺夫日記』だといいます。青木は「おくりびと」がアカデミー賞を受賞した際、新聞に「他人を思いやる気持ち、家族のきずな…。先進国が見失ってしまった心を、この映画が気づかせたのだと信じたい。」と、コメントを寄せています(産経新聞2009.2.24)。

一方、文化人類学者の上田紀行は、映画「おくりびと」は、死者を心を込めて送る人間の尊厳がテーマだとした上で、「人の死にぎわの崇高さを、宗教ではなく、徹底した『人と人との間の思いやりに満ちた技術』の中に見る。…中略…死者と生者の絆の中に自分と世界の深い存在のありかを感じる、現代人の心情に深くフィットするものだった」と論評しています(読売新聞2009.2.24)。

アカデミー賞は5,810名ものアカデミー会員の投票で決するのだといいます(静岡新聞2009.2.24)。番狂わせと報道された「おくりびと」の受賞は、「外国人が見たことのない人間的な儀式」(読売新聞2009.2.24)である納棺夫の中に人間として見失ってはいけない「人の尊厳、思いやり」について深く考える契機を与えてくれました。
学校での教育も同様でしょう。

一番大事にされることは何か。それは、「人とはどんな存在なのか」を様々な事象から学ぶことです。そして、その存在のすばらしさを実感することです。「生きること」「存在とは」をテーマにすることはすこぶる哲学的になりますが、少なくとも大人である私たちは、いつも気に掛けて子どもの教育にあたることが求められると思います。

教育の手法ややり方は変わりますが、根本のところは不変でありたいのです。そのために学校での学びがあるのだと考えます。

言葉を介して自分を見つめ、他の価値を認めるために国語科は大事です。ものごとを合理的に一番美しい形に納めるのが算数科でしょう。人の世のせめぎ合い、折り合いの付け方を学ぶのが社会科、ものごとの道理を通して真理に近づく理科、といった具合に教師である私たちは哲学的に学びの本質をおさえたいと思います。

教育は理念を大事にします。どのように教え、何点の成績を残したかに教育の本道、本質はありません。ハウツー式の教育方法に堕すことなく、授業を通して子どもたちから人としての存在を認める教育を、互いに目指していきましょう。平成21年度の研修テーマは「本質的な学ぶ楽しさ、「〜たい」を追究する授業をめざして」です。宜なるかな!
(平成21年4月1日)