学校日記

3/17(水) LOVE。。 56

公開日
2021/03/17
更新日
2021/03/17

校長室発

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語り部 雁部那由多(宮城県石巻高校1年生)





あの日、あのとき。

僕は、小学校5年生だった。

体育館で体育の授業を受けていた。

学校に迫り来る津波を見た。

目の前で人が流されていった。


がれきの山に遺体を見た。

自宅はヘドロに埋もれていた。

行方不明の友だちは帰ってこなかった。

僕たちは震災のことを口にしないように気をつけて、

何もなかったかのようにふるまった。


あれから5年。

僕は語り伝えたい。

あの日のことを、自分自身の言葉で。

二度と哀しみが繰り返されることのないように。





黒い津波


僕は、

たった1メートル先を流れていく波を前に、

逃げもせずただその場に立ちつくしていました。

避難途中だった大人が5人ほど、

僕の目の前で黒い津波にさらわれていったのです。


あのときの光景は、

今でも目に焼きついています。


そのうちのひとりに、

僕のいる玄関先まであと少しのところに

来ていた50代くらいのおじさんがいました。

その人は波に足を取られながら、

僕の目を見て、

僕に向かって向かって手を伸ばしていました。


でも僕は、

手をさし伸ばすことができませんでした。

おじさんの手をつかんだら、

自分も助からない。

直感でした。

我に返った僕は

口をぎゅっと結び、

片手に外履きを抱え、

波に胸までのみ込まれて流されていくその人から

目をそらし、

図書室に向かって全力で走り出しました。

その間、

一度も後ろを振り返りませんでした。





一日ひとつ、思い出を


最後にみなさん、

特に同世代の方に伝えたいことがります。


それは、

「一日ひとつ、

 何でもいいから思い出をつくってほしい」

ということです。


あの震災を経て

僕がたどり着いた結論は、

当たり前のことですが、

そのときそのときを大切にしなければいけない

ということです。


今、ここに僕たちが生きていることは、

奇跡的なことです。

たとえば、

家族と過ごす時間は明日なくなるかもしれません。

昨日「さよなら」を言った友だちは、

明日にはもういないかもしれない。

僕たちが生きるこの世界では、

そういうことが起こり得るんです。


だからこそ、

僕は今、

一日ひとつ、思い出をつくるように心がけています。


テストの点が悪かったことでも、

家族みんなでご飯を食べに行ったことでも、

そうした小さな出来事の一つひとつが全部、

やがて大切な思い出になります。


お別れも、

悲しい出来事も、いずれやってくる。

でも、

どうせやってくるのなら、

思い出をつくりながら生きることで、

少なくともその日が来たときの

後悔だけはなくせると思うのです。


僕の知り合いで家族を亡くした方が、

「もっと話をしておけば良かった」

「もっといろいろなことをしたかった」

と言っていました。

失ったものは、戻ってきません。

亡くなった人も、二度と帰ってきません。

だから

思い出をたくさんつくって、

少しでも心に留めておく。


普段何気なく過ごしている一日は、

誰にとっても貴重な一日なんだということを、

僕はたくさんの人に伝えていきたいと思います。


いまだに僕は、

ふとしたことで、

「ああ、生きていてよかった」

と感じます。

家の玄関を開けた瞬間、

「おかえり」

という声が聞えるだけで、

「今日も生きていた」ことを実感します。

自分の部屋に入って、

スイッチを入れたとき、

電気がつくだけで、

「ああ、幸せだなあ」

とほっとします。

「これまで僕は、

 大切なことを

 ずっとないがしろにしていたんだな」

今になってようやく、

そんなことを考えられるようになりました。


「いちばん大切なのは、

 一日一日を大切に生きていくこと」

そう思って僕は、16歳の今を過ごしています。





BY 「16歳の語り部」

   語り部 雁部那由多・津田穂乃果・相澤朱音

   案内役 佐藤敏郎


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