3/30(火) LOVE。。 94
- 公開日
- 2021/03/30
- 更新日
- 2021/03/30
校長室発
種子について
・・・「時」の海を泳ぐ稚魚のように
すらりとした柿の種
人や鳥や獣たちが
柿の実を食べ、種を捨てる
・・・これは、おそらく「時」の計らい。
種子が、かりに
味も香りも良い果肉のようであったなら
貪欲な「現在」の舌を喜ばせ
果肉と共に食いつくされるだろう。
「時」は、それを避け、
種子には好ましい味をつけなかった。
固い種子・・・
「現在」の評判や関心から無視され
それ故、流行に迎合する必要もなく
己を守り
「未来」への芽を
安全に内蔵している種子
人間の歴史にも
同時代の味覚に合わない種子があって
明日をひっそり担っていることが多い。
BY 「吉野弘詩集」 吉野弘