学校日記

第74回卒業証書授与式式辞

公開日
2023/03/19
更新日
2023/03/19

行事

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。先ほど、三十六人一人一人に卒業証書を手渡しました。卒業証書は、中学校三年間、いや、義務教育九年間の学業を修めた証拠です。あなたの努力の証として、一生大切にしてください。
 振り返りますと、令和二年二月二十八日から全国一斉臨時休校が始まり、四月十六日からは静岡県に緊急事態宣言が発出されました。その後も休校が続き、分散登校を経て、皆さんの入学式は六月一日に実施されたのです。学校のホームページには、「生徒と教職員のみの参加でしたが、新入生は多少緊張した面持ちでした」「生徒の態度は落ち着いて、とても立派です。校長からは、これからの新しい世の中では『想像』と『創造』二つの力を身に付け発揮できるようにしていこうという話がありました」とのコメントが掲載されました。それからは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返されるなど、なかなか感染症の波が収まりませんでした。結局、三年間、皆さんはずっとマスクを付けたままの学校生活が続いたのです。学校行事や部活動の大会が次々に中止となり、悔しい思いをたくさんしてきたと思います。よく辛抱し、ここまで自分を見失わずに頑張り通しましたね。本当にお疲れ様でした。
 一年生のときの思い出はありますか。
日帰り遠足となった松かげ合宿でしたが、ウォークラリーやキャンドルサービス、フォークダンスを上級生と一緒に楽しんだと聞いています。
 深海水族館を訪ねる遠足では、駿河湾の生物について事前学習を行い、その成果を手作りかるたに表現し、かるた大会を開催して盛り上がったそうですね。
 二年生のときの思い出は何でしょう。
「学びを止めない」というスローガンの下、一人一台端末が本格導入されると、授業で、生徒会活動で、わたしたち教職員が驚くスピードで皆さんはそれらを使いこなしていきました。小学校とのオンラインサミットも定着しました。
網引き体験や防潮堤での持久走体験、松かげウォークラリーを通して、第二中学校区を中心とした沼津の自然の美しさや文化の重みを感じたことでしょう。
 一年生のときには中止となった中体連大会に出場することができたのも、明るい材料でしたね。
 最上級生としての本年度。「自ら判断し、やり抜き、響き合う」という重点目標の下、積極果敢に下級生をリードしていきました。
 松かげ祭体育の部では「いっしょうけんめいの熱い風」を、文化の部では「芸術性あふれる、さわやかな風」を吹かせました。
 青少年赤十字に加盟して五十九年。静岡県の中学校を代表して特別表彰を受けました。二年目を迎えた「探究総合」では、皆さんのアイディアと行動力に裏打ちされた深い学びが実現できました。ボランティア活動に参加した生徒も多く、皆さんは地域に貢献する頼もしい中学生になりました。
 ところで、本校は、五年間にわたって、オリンピック・パラリンピック教育推進校・レガシー教育推進校の指定を受けました。あるパラリンピアンの方は、「夢を叶えるために大切にしていること」として、二つのことを挙げていらっしゃいました。
 それは、「夢中になれるものを見つけて失敗を恐れずにチャレンジすること」そして、「感謝の気持ちをもつこと」でした。
 この二つを伺ったとき、わたしは、自分が大学時代、リュックサックを背負い、西ヨーロッパを歩く、二か月間の一人旅に挑んだときのことを思い出しました。
 鎌倉や京都といった日本の中世都市に興味をもっていたわたしは、西ヨーロッパの中世都市を歩いて比較してみたいと思ったのです。ユーレイルパスを購入して電車を乗り継ぎ、ユースホステル泊まり歩きました。レストランには立ち寄らず、道ばたの出店で食料を調達しました。毎日がわくわく新鮮で、ひたすら街並みを歩いて中世を実感しました。夢中になるものを見つけることができたからこそできた、青春時代の冒険です。
 でも、旅が終わって成田空港に降り立ったとき、ほっとした表情で両親が出迎えてくれたことは忘れられません。我が子の好き勝手な行動の陰で、親は毎日心配で心配でならなかったのです。家族や周囲の人の支えがあって初めて、夢を追いかけることができる、人に感謝することを絶対に忘れてはいけないと痛感したのでした。
 皆さんも、これからの人生、「夢中になれるものを見つけて失敗を恐れずにチャレンジすること」、「感謝の気持ちをもつこと」を必ず実践してください。
 そして、もう一つ、わたしが夢を叶えるために大切だと思うことがあります。それは、「周囲の人と温かい人間関係を結ぶこと」です。本年度、保健ボランティア委員会が運営した「ピア・サポート活動」を通して、自分も仲間も大切にする心地よさを実感しました。人は一人では生きていけません。笑顔を絶やさず、周囲の人と明るくつながることのできる人になっていってください。
 保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。これまで手塩に育ててこられたご苦労に対し、最大限の敬意を表します。
 静岡県清水区出身で、元Jリーガーであり、現在Jリーグ第6代チェアマンを務めている野々村芳和さんは、次のように述べています。「サッカーは『作品』と常々申し上げていますが、サポーターの皆さまから溢れ出る熱量・雰囲気は、魅力的な作品となる要素として必要不可欠なものであり、向けられた声援はピッチ上の選手を確実に後押ししてくれます」と。
 サッカーという作品をお子様、サポーターを保護者と考えますと、いかに、保護者の皆様から溢れ出る熱量・雰囲気が、お子様を魅力的な人に成長させることに影響していたかと思うのです。お子様が第二中の文化を築いていくことができたのも、皆様のご協力のおかげです。ありがとうございました。
 体育館のドアを開けると、新しい世界が待っていますね。
 最後に、わたしの大好きな谷川俊太郎さんの詩を紹介して、はなむけの言葉といたします。

東の空に日が昇る 緑の丘に風が光る
新しい今日 自由な今日だ
その今日に学ぶ厳しさ その今日に生きる喜び
あこがれやまぬ心抱いて
歴史を訪ね宇宙に問いかけ
一人一人が明日をひらく
ひたむきに おおらかに 友よゆこう
ふるさとの誇りを胸に

 ご卒業、おめでとうございます。